1.呼び出された理由は?
目次
2.突然の校長室への呼び出し!
教員になって6年がたち、学級運営や授業、部活に熱心に取り組んでいた頃の話です。
その年の11月。私が部活の練習でグランドにいると、私を呼び出す放送がかかります。
「西川先生!」
「至急、校長室においで下さい!」
悪いことをした記憶が無かった私は、練習メニューをキャプテンに伝え、すぐに校長室に向かいます。
職員室に入ると教頭が私の所にきて、こう言います。
「服装は・・・、まあ、仕方ないか!」
「シャツをズボンにしまって!」
「タオルは机に置いてきて!」
Tシャツに短パンの私の服装を整えさせた教頭がこう言います。
「お前、何したんだ?」
「教育長がアポなしで来たぞ!」
「お前を名指ししているんだ!」
3.校長室に行くと教育長と2人っきりに!
『○○くんを怒ったから、保護者が教育委員会にいったのかな?』
『(嫌がらせをされた)先輩教師の悪口を言ったのがばれたかな?』
『あっ、でも、あれは大学の友人に言っただけだからな~!』
『まさかあいつ(大学の友人)が教育委員会に訴えたの?』
とにかく、教育長に呼び出された理由が分かりません。考えても仕方がないので、私は校長室のドアをノックします。
「コンコン、コンコン」
「失礼します。」
校長室に入ると講演会などで何度か見たことがある教育長がいます。校長は教育長の紹介をして校長室からでていきました。
私は校長室で教育長と2人にされてしまったのです。
4.私を褒めまくる教育長!
教育長が話し始めます。
「教員には慣れましたか?」
「確か先生は、去年、市の論文で最優秀賞を取りましたね!」
「あの論文はとても素晴らしかった!」
「子どもの成長が読み取れましたよ。」
さらに教育長は続けます。
「部活動にも熱心だそうですね!」
「校長先生に聞きました。」
「何でも今年は市内で1、2を争う強豪になってきたとか。」
「テニスの経験者なのですか?」
それに対して、私は答えます。
「論文を褒めていただき、ありがとうございます。」
「子どもたちがガンバってくれているのをまとめただけなんです。」
「それを褒めてもらうのは、少し申し訳ない気がします。」
「これからも、子どもたちが授業を楽しいと思ってくれるように、がんばっていきたいと思っています。」
部活についても答えます。
「テニスは素人です。」
「ただ、休日を使って指導者研修に参加しています。」
「子どもたちが熱心なので、なんとかそれに応えてあげたくて。」
「子どもたちに、わかりやすく指導する大変さを感じているところです。」
5.より良い支援方法を知りたくないですか?
教育長は私にこう言います。
「子どもたちが楽しく思えるように!」
「子どもたちにわかりやすく伝えるように!」
「とても素晴らしい事です!」
私を褒めたあと、教育長は私にこう言いました。
「先生!」
「子どもたちが、もっと勉強を楽しくなる方法を知りたくないですか?」
「子どもたちに、もっと理解しやすく教える方法を知りたくないですか?」
細かいことを考えていなかった私は二つ返事でこう答えます。
「知りたいです!」
「教えて下さい!」
すると教育長はこう答えました。
「特別支援学校にいけば、全ての事を学べます!」
6.特別支援学校に行けば高度な支援方法を学べます!
後で知ったことですが、教員の異動には交流というものがあります。
・小学校の先生が中学校へ、中学校の先生が小学校へ行く交流異動。
・中学校の先生が高校へ、高校の先生が中学校へ行く交流異動。
・別の地域の教育方針を学ぶために、他市へいく交流異動。
・小学校の先生や中学校の先生が、特別支援学校にいく交流異動。
当時、私は特別支援教員の免許を持っていませんでした。そこで、そのことを教育長に伝えました。
「中学校と高校の教員免許しかもっていないので支援学校には行けません!」
すると教育長は答えます。
「大丈夫です!」
「交流ですので、免許はいりません。」
7.学級運営を極めたいんです!
このときの私は学級運営や部活指導に興味をもっていました。そのため、教育長に次のように伝えました。
「すみません。」
「今、私は学級運営に力を入れています。」
「去年、不登校だった子が私のクラスで学級復帰をしてくれました。」
「その子も含め、同じように困っている子の力になりたいと思っています。」
「その子たちに必要な支援を勉強したいんです。」
すると教育長は次のように返してきます。
「特別支援学校の子には同じような体験をしてきた子がたくさんいます。」
「その子たちの支援をすれば、さらに困っている子の気持ちも理解できるようになりますよ!」
8.楽しくて分かりやすい授業を極めたい!
私はこのように言ってみます。
「楽しい授業をしたくて、教員になりました。」
「まだまだ、私の授業は半人前です。」
「楽しくて、覚えやすくて、自然と知識になる授業の研究をこの学校でしたいです!」
すると教育長は次のように返してきます。
「それは大丈夫です!」
「特別支援学校の子どもは、得意な教科もあれば苦手な教科もあります。」
「極端な子が多いのです。」
「そんな苦手を持っている子どもたちが、『楽しくてわかりやすい!』と思える授業ができれば、それは通常級の子どもたちの『楽しくてわかりやすい授業』になります!」
「ぜひ、特別支援学校で、『楽しくてわかりやすい授業』を極めて下さい。」
9.部活指導を極めたいんです!
私は最後の切り札を出します。
「今、テニス部が強くなってきています。」
「子どもたちと一緒に、努力してきました。」
「あれだけ熱心な子どもたちを放ってはおけません。」
「このまま、この学校で働かせてもらいたいです。」
すると教育長はまた切り返してきます。
「そんなに熱心な子どもたちなんですね!」
「とても素晴らしい指導です。」
「でも、そういう子たちなら、先生がより成長するために特別支援学校に行くことを認めてくれるでしょう!」
「さらには先生のために、もっとがんばるのではないでしょうか?」
「3月まで指導をしていただき、それ以降は生徒に任せても大丈夫でしょう!」
10.特別支援学校に行けば全てを極められます!
さらには教育長は次のように言ってきました。
「特別支援学校の子どもたちは、体を動かすことが苦手な子もいます。」
「そんな子どもたちに、運動の素晴らしさを教えてあげて下さい。」
「先生なら、それができると思います。」
「また、特別支援学校から帰ってきたとき、それが部活の指導にも役立つはずです。」
「運動が苦手な子にも上手に指導できるようになっているでしょう!」
11.人事権は教育委員会にあることをお忘れなく!
私は必死に教育長に反論(?)をしました。しかし、さすがは教育長です。私の反論(?)はことごとく打ちのめされたのです。
2時間ほど反論(?)をした私に教育長は次のように言って学校を去ります。
「先生の気持ちはお聞きしました。」
「ただし、先生のご希望がかなわないことも十分あります。」
「そのときは、申し訳ありませんが指示に従っていただきます。」
「先生方の人事権は教育委員会にあることをお忘れ無く。」
12.前向きに特別支援学校について勉強!
教育長の話から、私の異動は決定しているようです。異動が決定しているのを「行きたくない!行きたくない!」と言っていても意味がありません。
私は教育長の言うように特別支援学校という場所で様々な支援を吸収してこようと考えを改めました。
そこで、特別支援学校を経験したことがある先輩教諭に、特別支援学校の様子をいろいろと聞いたり、特別支援教員の免許について調べたりしました。
当時は、特別支援教育についての知識がほとんど無かったため、本を買ってきて勉強をしたりもしました。
13.特別支援学校への異動が白紙に!その理由は?
教育長と話をして2ヶ月が経ちました。
私は特別支援が学校でガンバルという決意を持っています。
そんな、2月の寒いある日。部活でグランドにいた私を呼び出す放送がかかります。
「西川先生!」
「至急、校長室においで下さい!」
私が急いで校長室に行くと、校長先生が電話の受話器を渡します。電話の相手は教育長です。
電話にでた私に教育長が次のように言いました。
「2ヶ月前は、お話を聞かせていただきありがとうございました。」
「担当の者と話をした結果、先生の熱心なクラスや部活への思いを尊重して、特別支援学校への異動は白紙に戻すこととしました。」
「これからも、A市の子どもたちのためにご尽力下さるようにお願いいたします。」
あとで聞いた話では、私の前に異動依頼をした小学校の先生がいたそうです。その先生は、最初は異動を断ったそうなのですが、私への電話の数日前に教育委員会に異動希望を伝えました。
その結果、「嫌がっている私」より「希望しているその先生」に交流異動をしてもらうことを教育委員会は決めたそうです。
特別支援学校には行かなかった私ですが、この話がきっかけで特別支援教育に興味をもち、最終的には教員免許を取り、特別支援教育コーディネーターになったのでした。
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