特別支援学級
目次
※「特別支援学級」や「通常学級」「発達障害」と言う言葉は好きではありませんが、通念として使用させていただきます。
1.特別支援学級や通常学級の相談
私は「特別支援教育学校の教員免許」を持っています。また、「特別支援教育コーディネーター」の役職を何度もいただきました。
さらには、「進路指導主任」として子どもたちに進路の助言をしてきましたし、「公認心理師」として発達障害の知識や対応経験も豊富にもっています。
そんな私のところには、特別支援学級についての相談が多く寄せられます。
「学校の先生から特別支援学級を進められたけど・・・。」
「特別支援学級から通常学級に戻れるの?」
「中学校で特別支援学級にいて高校には行けるの?」
また、特別支援学級ではなく、通常学級への進級を希望する親御さんの相談も多く寄せられています。
「特別支援学校ではなく全日制高校に入れたい。」
「子どもを通常学級に入れたいと思っちゃダメですか?」
「友達と同じクラスで学ばせたいと考えているんですが・・・。」
「どうすれば、通常学級になじむことができますか?」
2.発達障害の子どもは特別支援学級に行かなきゃダメ?
教員時代でも、今でも、このような言葉を耳にすることがあります。
「発達障害のある子どもは特別支援学級に入れるべきだ!」
「通常学級に入れたいというのは親のエゴだ!」
「子どもの事を考えたら特別支援学級がいい!」
確かにこのような考え方も間違ってはいないでしょう。
しかし、通常学級に入ることで得られるメリットもあります。もちろん、子どもの負担が増える可能性は否定できません。
特別支援学校の教員免許を持っている私は「小学校は特別支援学級」「中学校からは通常学級」という子どもの担任を何度もしてきました。
学校の先生たちの中には、その子たちの「通常学級」在籍に反対する方も多くいらっしゃいます。実際、勉強面だけで考えると常に学年でビリを取っていた子もいからです。
3.小学校は支援学級で中学校から通常学級はあり?
ある中学校に赴任をして特別支援教育コーディネーターと通常学級を担任したときの話です。
その年は、小学校で「特別支援学級」にいた2人の子どもが、中学校入学と同時に「通常学級」に進級しました。
私は学習の遅れが顕著なAくんの担任となります。そして、Aくんに比べると手がかからないBくんは、私の次にベテランの先生のクラスになりました。
しかし、3年後にはAくんとBくんの間に大きな「差」が生じます。
私のクラスに在籍したAくんは様々な困難を乗り越え、見事、希望した全日制高校に合格します。テストの順位もビリだったのが、下から数えて20番程度まで上がりました。
人間関係についての自信もつき、自分から友達に声をかけられるようにもなりました。
ただ、私の次にベテランの先生のクラスになったBくんは中学1年生の2学期から不登校となり、不登校のまま中学を卒業します。
成人式で聞いた噂では、通信制高校に入学するもスグにやめてしまい、20才になった現在は家にひきこもっているとのことでした。
ちなみにAくんとBくんは、現在、22才です。(執筆時2024年)
4.特別対応や保護ではなく練習と支援
私はAくんに対して、乗り越えることができるように支援をしました。
学習面では放課後やテスト前の勉強会を行い、少しずつ「やる気」や「自信」「継続」を身につけさせていきました。
人間関係では事前に友達との話し方のロールプレイ(RP)を行い、実際に実行する場を作りました。当然ですが、はじめから上手に出来たわけではありません。
私はクラスメイトとAくんの間に上手に入り、友達関係が悪くならないように支援をしました。
だからといって、「Aくんと仲良くしてあげてね~」などの言葉を使ったことはありません。あくまでもAくんの努力を支援する立場をとったのです。
これらの支援を2年間続けたことにより、Aくんは自分から友達に話しかけることができるようになりました。
私は中学3年生になったAくんの担任となることを拒否しました。もちろん、心配があったため隣のクラスにはしてもらいました。
しかし、私の心配は杞憂に終わります。勉強面、人間関係面に自信をもつことができたAくんは中学3年生のクラスでも友達を作ることができ、毎日、笑顔で登校することができたのです。
5.特別対応をする担任が多いが・・
Bくんの担任は下記のような考えを持っていました。(口にしていました。)
「通常学級に来るんだから、親も子も覚悟はできているでしょ!」
「ダメなら特別支援学級に戻ればいいんだし!」
「困った事があったら連絡があるでしょう!」
また、勉強や登校に関しては、このように言っていました。
「宿題はできるときにやればいいですよ。」
「分からない問題はやらなくていいですからね。」
「ムリしなくていいですよ。」
「来られるときに学校に来ればいいですから。」
担任はBくんを特別支援学級出身の「何もできない子」として扱ったのです。
6.特別支援学級出身なんだから優しくしてあげなさい?
Bくんへの接し方を見ていたクラスの子たちはヒソヒソと裏で話をしていたようです。
「Bくんだけ宿題をやらなくてずるい!」
「先生はBくんを贔屓しているよね~。」
「Bくんは何をしても絶対に怒られないよね~。」
「何もしなくても怒られないんだよ!」
これを聞いた担任はクラスの子にこう言ったそうです。
「Bくんは特別支援学級出身なんだから優しくしてあげなさい!」
「みんなと同じ事はできなんだから仕方ないだろ!」
7.通常学級はあの子には無理だったんだ?
クラスで浮いた存在になってしまったBくんは、登校を渋り始めます。しかし、担任の対応は変わりません。
「宿題はできるときにやれば良いですよ。」
「分からない問題はやらなくていいですからね。」
「ムリしなくていいですよ。」
「来られるときに学校に来ればいいですからね。」
当然ですが、この対応でBくんの不登校が解決することはありません。そして、残念な事にBくんの不登校は継続し、不登校のまま卒業してしまったのです。
卒業前にBくんの担任はこう言っていました。
「最初から特別支援学級に行っていればよかったのに。」
「通常学級はあの子には無理だったんだよ!」
「親が全日制高校に行かせたいと思ったのが間違いなんだよ!」
8.子ども任せにせず正しい支援を!
「特別支援学校ではなく全日制高校に入れたい。」
「子どもを通常学級に入れたいと思っちゃダメですか?」
「友達と同じクラスで学ばせたいと考えているんですが・・・。」
「どうすれば、通常学級になじむことができますか?」
特別支援学級に在籍していた子どもだろうと、正しい支援や対応を行うことで、通常学級に適応し、全日制高校に進学することができます。
しかし、担任や親が必要な支援をせず、子ども任せにしてしまっては、子どもの成長は期待できません。
これは、発達障害の有無と関係ありません。全ての子どもにとって支援は必要なのですから。
9.正しい支援ができる先生は少ない
発達障害の子どもを、特別支援学級から通常学級、そして全日制高校に行かせたことがある教員は少ないのが現状です。
私の教員生活25年でも、私と同じような実績がある先生は2人だけでした。そのうちの1人の先生は中学校の特別支援学級の担任を長くやられていた先生です。
「あの先生のクラスなら中2か中3で通常学級に転級できる。」
こう言って、他の地域からその学校に転校してくるお子さんもいたほどです。基本的な考え方は私と同じでしたが、私以上にスパルタの先生であったことは間違いありません。
ただ、この先生もBくん担任のように、このような発言をすることはありませんでした。
「発達障害のある子どもは特別支援学級に入れるべきだ!」
「通常学級に入れたいというのは親のエゴだ!」
「子どもの事を考えたら特別支援学級がいい!」
10.発達障害=特別支援学級ではない
「学校の先生から特別支援学級を進められたけど・・・。」
「特別支援学級から通常学級に戻れるの?」
「中学校で特別支援学級にいて高校には行けるの?」
「特別支援学校ではなく全日制高校に入れたい。」
「子どもを通常学級に入れたいと思っちゃダメですか?」
「友達と同じクラスで学ばせたいと考えているんですが・・・。」
「どうすれば、通常学級になじむことができますか?」
私の所には、このような悩みをお持ちの親御さんからの相談がたくさん寄せられています。
また、学校の先生やお医者さん、カウンセラーさんから下記のように言われた親御さんの相談もたくさん寄せられています。
「発達障害のある子どもは特別支援学級に入れるべきだ!」
「通常学級に入れたいというのは親のエゴだ!」
「子どもの事を考えたら特別支援学級がいい!」
最も驚いたのは、お医者さんからこう言われたお母さんがいたことです。
「大学進学?ムリに決まってるでしょ!」
「通常学級だって厳しいのに!」
「来年からは特別支援学級に入って、高校からは特別支援学校に行きなさい!」
私はこのお子さんの支援を6年間おこないました。中高あわせた6年間での欠席はコロナとインフルエンザの2回の出席停止のみでした。
そして、現在は偏差値53~55の大学に合格して、大学生活をエンジョイしています!