未納くんの給食費は誰が払う?
目次
1.給食費を払えるのに払わない親
少し古くなりますが、平成30年に文部科学省から発表された「学校給食の徴収状況調査」では、給食費未納がある学校は小学校42%、中学校55%とのことでした。
シングルマザーやシングルファザー、祖父母が子どもを育てている家庭など、貧困が原因で給食費や学年費を払えないのは仕方のないことです。
当然ですが、このような場合は、学校から公的機関の手続きや相談窓口などを紹介させていただきます。
もちろん、このような家庭の親御さんや祖父母の方に、学校が文句や苦情を言うことはありません。
お子さんやお孫さんに対しても同様です。
ただ、文部科学省の調査でも、私の教員経験でも、「払えるのに払わない家庭」が多くある事は問題です。
文部科学省の調査によると、給食費未納の約70%が「払えるのに払わない家庭」だそうです。
2.学校が勝手に作って食べさせているから払わない
「義務教育なんだから、給食費を払わないのは当然ですよね!」
「学校が勝手に給食を作って、食べさせようとしているんですから!」
給食費未納の親(略:未納親)がこのように言ってきたことがあります。
それならば、お弁当を持参して給食を停止(給食なしに)すればいいと思いませんか?
私が教師をしていた2つの都道府県では、「アレルギーで給食を食べられない子」のために、給食を停止することができました。
当然、給食費は発生しません。
給食の時間、みんなと一緒に「自分で持ってきたお弁当」を食べている子もいましたし、給食の時間だけ別室に行き「自分で持ってきたお弁当」を食べている子もいました。
周りの子どもたちも理由を分かっています。
だから、お弁当の事にはふれません。
給食とお弁当の違いはあっても、友達として普通におしゃべりをして、お互いに食事の時間を楽しんでいました。
3.給食を停止にしてお弁当を持ってくればいいのに・・・
この未納親も、自分でお弁当を作って、子どもに持たせればいいと思いませんか?そうすれば給食費を払わないで済むのに・・・・。
しかし、この未納親は筋の通らないことを言ってきます。
「うちの子は給食を、ムリヤリ、食べさせられているんです。」
「それなのに何でお金を払わなければいけないのですか?」
担任が給食の停止を勧めると、このように言ってきました。
「子どもが、突然、アレルギーになるわけないですよね!」
「もし、その嘘がばれていじめられたらどうするんですか?」
「理由を隠していても、周りの子はしつこく聞いてきますよね?」
「うちの子は、それを無視することが出来ないと思います。」
「給食を停止して子どもが不登校になったら、いじめられたら、学校は責任を取ってくれるんですか?」
4.主任の仕事は未納親に話をすることで回収ではない!
上記の未納親の言葉は、実際に私が聞いた言葉です。
校長からの命令により、主任と担任、生徒指導主事の私が家庭訪問をして未納親に言われた言葉なのです。
このような理不尽が許せない私は、どのような方法で給食費を払わせるかを考えます。
しかし、トラブルを嫌う主任はこう言います。
「とりあえず話が出来たから、私たちの仕事は終わりだよ!」
「まあ、払ってもらえなくても良いでしょう。」
「去年と同じように会計をすることになるんだから。」
若い担任の先生は納得いかない表情をしていました。
だからと言って、未納親にお金を払わせる方法が分からないのでしょう。
理不尽な状態を受け入れようとガンバっている感じがしました。
5.未納くんの給食はどうなるの?食べさせないの?
親が給食費や教材費、学年費などを払っていない場合、その子ども(以下、未納くん)にはどのようなマイナスがあるのでしょうか?
結論から言うと未納くんにマイナスが及ぶことは一切ありません。
本来であれば、給食費を払っていないのですから、未納くんに給食を提供する義務はありません。
お金を払わずにラーメンを食べたら、無銭飲食として警察に捕まるのは誰もが知っている事でしょう。
しかし、学校と社会は違います。
給食費を払っていないからと言って、未納くんだけ給食を食べさせないわけにはいかないのです。
お金を払っていないのは親であって未納くんではありません。当然、未納くんに責任はないのです。
実際、自分の親が給食費を払っていないことを知らない未納くんがほとんどです。
そんな未納くんたちに、先生たちがこのように言えるでしょうか?
「あなたの親は給食費を払っていないから、あなただけ給食はなしよ!」
もちろん、このような当然の言葉を未納くんに言うことはできません。
これが教育的配慮とよばれるものです。
6.給食を食べさせないで不登校になったら・・・
また、学校は「未納くんに給食を配らなかった」ことで、未納くんが「いじめ」られたり、「不登校」になってしまたりすることを恐れます。
給食費を払えるのに払わない親のほとんどはモンスターペアレントです。
そんなモンスターペアレントが「いじめ」について知ったらどうなるでしょう?
子どもが「不登校」になったら、どのように言ってくるでしょう?
もちろん、自分が給食費を払っていないから「いじめられた」「不登校になった」と思うことはありません。
なぜなら、理屈が通らないからこそ「モンスターペアレント」と呼ばれるのです。
このような親の対応をすると肉体的にも精神的にも疲れ果ててしまうことでしょう。
これらの理由により、未納くんも他の子と同じ給食を食べることが出来るのです。
7.未納くんの給食費は誰が払うの?
それでは、未納親が払っていないお金は、どこから捻出されるのでしょうか?
給食費を払わない子どもには給食を提供しない自治体もありますし、私が勤務していた学校のように払わなくても提供する自治体もあります。
給食費に関して言うと、私が勤務していた自治体は「集めた給食費の合計によって献立を決める」対応を取っていました。
分かりやすくするために極端な例で説明をしたいと思います。
(実際には自治体から補助がでていること、全体の人数も多いことから1人ひとりの負担は小さくなるとお考え下さい。)
ある学校の全校生徒が10人だったとします。
給食費は1食300円です。
この場合、栄養士さんは「1回3000円」という予算を元に給食の献立を考えます。
しかし、その学校に未納親が5人いたとします。
半分の親が未納となりますので、学校に納められる給食費も半分の1500円となります。
このような場合、栄養士さんは「1回1500円」と言う予算を元に10人分の給食の献立を考えます。
1人あたり150円の給食が提供されるのです。
当然ですが、給食の質は落ちることになりますし、1人ひとりの給食の量も減ってしまうことでしょう。
子どもの大好きなデザートが提供できない自治体があったという話も聞いたことがあります。
8.結論
「給食費を未納している親が多ければ多いほど、給食の質が悪くなり量が減らされる。」
「真面目に給食費を払っている親のお金で、未納親の子どもは給食を食べている。」
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