中学1年生のクラス替えは誰がする?中学校の先生?クラス替え④

クラス替え

子どもたちのことを知っている○○学校の先生


1.年度末に小学校の授業を見学する中学校の先生

 地域によっては2月~3月にかけて、中学校の先生が研修と称し小学校の授業を見学することがあります。これは4月から中学校に入学する子どもたちの実態を確認するという目的で行われます。見学に行く先生は中学3年生の担当をしている先生がほとんどです。なぜなら3年生の先生が新1年生の担任になる確率が高いからです。

「1回の見学で子どもたちの様子が分かるの?」

 このような質問をいただいたことがあります。この質問への返答は「もちろん分かります!」です。先生たちもプロですので授業を1~2時間みるだけでもたくさんの情報を入手することができます。

「Aくんは落ち着きがなく、すぐに周りの子に声をかけてしまうな!」
「4月の時点でしっかりと注意と支援を行っていこう!」
「Bさんはヤンキータイプだな!」
「この子が持っているエネルギーを良い方向に持っていきたい!」
「学級委員などリーダー的な役割を与えれば良い方向にいくだろう!」
「Cさんは周りの目を常に気にしているようだ!」
「このような真面目なタイプの子の担任はしっかりと注意ができる先生がいいだろう!」
「クラスが落ち着けば力を発揮できるタイプだな!」など

 ただ、これらの情報が「中学1年生のクラス替え」に影響を及ぼすことはありません。なぜならば「中学1年生のクラス」は小学校の先生がつくるものだからです。

2.中学校1年のクラスを決めるのは小学校6年の担任

 中学校1年生の「クラス替え」は小学校の先生が行います。当たり前ですが中学校の先生は小学6年生のことを何も知らないからです。
 
 小学校の先生には中学校から「新中学1年生のクラス数」が伝えられます。そのクラス数を元に小学校の先生は「学級編成」を行っていくのです。
 例えば「新中学1年生のクラスが4クラス」になることが決まっていたとします。その場合は、各小学校の先生は自分たちの学校の小学校6年生を男子4クラス、女子4クラスに分けます。

 例えば、ある中学校の校区には3つの小学校があったとします。

・A小学校:「男子40人」+「女子40人」
・B小学校:「男子12人」+「女子12人」
・C小学校:「男子20人」+「女子20人」

 この場合、それぞれの小学校の先生は下記の人数で6年生を4つに分けます。

・A小学校→「男子10人×4クラス」+「女子10人×4クラス」
・B小学校→「男子3人×4クラス」+「女子3人×4クラス」
・C小学校→「男子5人×4クラス」+「女子5人×4クラス」

※ 11人の場合は「3人」「3人」「3人」「2人」のようになるべく均等に分けます。

 小学校でも中学校の学級編成と同じようにクラス替えを行います。ただ、前述したとおり小学校では「人間関係を重視」した学級編成を行います。そのため、最初のテストでクラスの平均点に大きな差が出来てしまうことがあります。

3.小規模小が新しいクラス替えを提案するも・・・

 ある中学校に赴任する少し前の3月下旬のことです。以前、同じ学年で働いた先輩教諭から連絡がありました。その先輩はA小学校の校長になって2年目の先生です。

「西川先生はA中学校に生徒指導として赴任するんだよね!」
「A小学校の子どもの支援をお願いしたくて連絡したんだ!」
「去年、A小学校から中学校に入学した子のうち5人が不登校になってしまったんだ!」
「その5人の支援やフォローを頼むよ!」
「また、4月から入学する新1年生の支援もお願いしたいんだ!」
「もしかしたら、また、不登校になってしまうかもしれないから!」

 A中学校には、小規模小学校のA小学校、中規模小学校のB小学校、大規模小学校のC小学校の子どもたちが集まります。そのため、A小学校の子どもたちは、同じ学校の仲間がクラスに1~2人しかいない状態となります。仕方のないことかもしれませんが、確かにA小学校の子は肩身の狭い思いをするようになるでしょう。

 私はその学校で生徒指導主事と新1年担任の役職をいたたきました。先輩から相談をいただいた私は、学年会議や職員会議で「A小学校の子どもに意図的に声をかける」提案をします。特に学年会議では不登校の子どもを出さないように支援の大切さを伝えていきました。

 ゴールデンウィークに入ると、先輩(A小学校の校長)から、飲み会の誘いをいただきます。珍しく先輩のおごりです。

※ 教員の世界は割り勘が基本です。私は若い頃、先輩教員に飲み会に呼び出され2時間、説教をされたことがあります。ほとんど飲み食いができず五千円を払った最悪な思い出です。

「2時間の説教で五千円!さらに2次会では運転代行会社を・・・。」
「キャバクラ大好きの先輩!お気に入りのキャバ嬢は・・・。」など

 飲み会では「A小学校の卒業生」の様子について聞かれたり、感謝の言葉をいただいたりしました。さらには、先輩がA小学校で考えたアイディアについても教えていただきました。

「A小学校出身の子は中学で不登校になりやすいんだよ!」
「去年は5人、その前も3人、更に前も4人が不登校になっているんだ!」
「1学年で15人前後しかいないから、2割~3割が不登校になっている計算なんだ!」

 人数だけで考えると「少し多い」程度に感じますが、割合にすると「とても多い」と感じます。確かに15人のうち5人が不登校になるのは大きな問題と捉えたほうが良いでしょう。

「去年、A小学校に赴任してから、いろいろ対応をしているんだ!」
「中学校の見学を増やしたり、保護者や地域の人との体験を増やしたり・・・。」

 先輩も校長として様々な対策に取り組んでいるようです。話を聞いていると先輩の口から私が考えた事がなかったアイディアが発せられます。

「中学校は6クラスでしょ!そうするとA小の子は1クラス2~3人となるわけだ!」
「自分+1人~2人では、居場所が作りづらいのは仕方ないよね!」
「そこで、今年はA小を2つのクラスに分ける提案を地区の校長会でしたんだ!」
「例えば、1組にA小が7人、2組にA小が8人、3~6組は0人!」
「こうすれば安心感が増すから、不登校になりづらいでしょ!」

 このアイディはとても面白いアイディアです。私の頭の中には「クラスは均等にする」という固定観念があったため、このような「クラス替え」を考えたことはありませんでした。同時に「やってみる価値はある!」とも感じたアイディアです。

「ただ、A中の校長からはNOと言われたよ。」
「前例がないし、他の小学校の保護者から苦情がくる可能性があるからダメだと。」
「確かにそうだよな~。苦情が来る可能性はあるよな~。」

 もちろん、その後(私がA中にいる間)も、このアイディアが採用されることはありませんでした。

4.春休みに小学校と中学校で合同会議

 春休みに入ると小学校6年生の先生が、作成した「新クラス名簿」をもって中学校を訪れます。そこでは「新中学1年生の顔写真」をもとに、生徒1人ひとりについての情報交換を行います。

「Aくんは児童会長をしている正統派です!」
「Bさんは心が優しく、真面目でクラスのリーダーです!」
「Cさんは運動が得意で、何事も積極的に活動します!」
「Dくんの親御さんはクレームが多いので注意が必要です。」など

ひとつの小学校との会議には2~3時間を要します。そのため、中学校区に複数の小学校がある場合は別々に会議を行うため、1日の全てを小学校との会議に費やすことになります。

5.中学1年生のクラスが決定!

 中学校区に1つの小学校しかない場合は「新中学1年生のクラス」=「小学校の先生がつくったクラス」となります。
 中学校区に2つ以上の小学校がある場合、中学校の先生が「小学校の先生からの情報」と「授業見学の情報」をもとに、各小学校がつくってきた「新中学1年生のクラス」を組み合わせます。例えば下記のように組み合わせをします。

1組女子→「A小の1組」「B小の4組」「C小の2組」を合わせる。
1組男子→「A小の3組」「B小の3組」「C小の1組」を合わせる。
2組女子→「A小の2組」「B小の1組」「C小の4組」を合わせる。

 ただ、中学校の先生は子どもたちのことをあまり知らないため、それほど時間をかけることはありません。上手に組み合わせができる場合もありますし、組み合わせに失敗することもあります。

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