火の神ガンバれ~?神様を応援する子どもたち
目次
1.宿泊教室で起きた様々なハプニング!
ある学校で宿泊教室(自然体験教室)に行ったときの話です。
体験先は海のそばにある自然の家でした。
その自然の家では様々な体験をすることが出来ます。
釣り、地引き網、漁港見学、海水浴、サイクリング、カッターボート、ハイキング、サンドスキー、天体観測、BBQ、そして、キャンプファイヤー。
その学校の宿泊教室は2泊3日だったこともあり、子どもたちは「海水浴」以外の全ての体験を行うことになりました。
ただ、その宿泊教室では、様々なハプニングが起きたのです。
2.キャンプファイヤーの事前練習
最も大きなハプニングは、浜辺で行うキャンプファイヤーのときに起こりました。
キャンプファイヤー担当の先生は、とてもアイディアマンで子どもたちを楽しませることが好きな先生です。
担当の先生は、宿泊教室に行く前からキャンプファイヤーを盛り上げるため、火の神と火の子への演技指導を行っていました。
火の神を担当するのは宿泊教室に同行している教頭先生、火の子の役をするのは4人の子どもたちです。
「最初に司会が『燃えろよ燃えろ』を歌うことを伝えます。」
「その後、全員で『燃えろよ燃えろ』を歌います。」
「1番が歌い終わったと同時に火の神はたいまつに火をつけて下さい。」
「子どもたちの歓声が上がると思いますので、そうしたら、火の神と火の子は入場して下さい。」
「荘厳な儀式にしたいので、慌てず、ゆっくり歩いて下さい!」
「そして、キャンプファイヤーの近くに来たら、火の子は火の神の前に跪きます!」
3.台詞も暗記して準備万全!
担当の先生は、しっかりと台詞も考えていました。
神「汝には信頼の炎を授ける!」
子「信頼の炎が大きくなるようにがんばります!」
神「汝には友情の炎を授ける!」
子「友情の炎が大きくなるようにがんばります!」
神「汝には協力の炎を授ける!」
子「協力の炎が大きくなるようにがんばります!」
神「汝には努力の炎を授ける!」
子「努力の炎が大きくなるようにがんばります!」
子「我々は火の神から4つの炎をいただいた!」
子「全員がこの4つの炎を心にともして生きていこう!」
子「今日より、ここにいる全員が仲間だ!」
子「1人ひとりが仲間として信頼、友情、協力、努力をしていこう!」
宿泊教室の前に極秘特訓をした火の神と火の子は、万全の体制でキャンプファイヤーに臨んだのでした。
4.担当と教頭のヒソヒソ話の内容は?
宿泊教室初日の夕食を食べ、片付けが終わったら、待ちに待ったキャンプファイヤーが始まります。
食堂で夕食を食べていると、キャンプファイヤー担当の先生が教頭先生と何やらヒソヒソと話をしています。
たまたま近くに座っていた私の耳には2人のヒソヒソ話の内容が聞こえてきました。
「教頭先生。先程、キャンプファイヤー場所の下見に行って来ました。」
「そうしたら、キャンプファイヤーが盛り上がるアイディアを思いついたんです。」
自分の目でキャンプファイヤーを行う砂浜を確認した担当の先生は、実際に開催場所を見たことで何か面白いアイディアを思いついたようです。
「教頭先生。火の神の登場を海からに変えようと思うのですがどうでしょうか?」
「歌の1番が終わったところで、海の上にたいまつの火が灯ったら、盛り上がるとおもいませんか?」
5.突然の演出変更!火の神が海から現れる!
確かに火の神が海から登場したら盛り上がるでしょう。
しかし、どうやって海から登場させるのでしょう?
教頭先生を真っ暗な海の中で待機させるつもりなのでしょうか?
すると、担当の先生は、その疑問に答えてくれました。
「教頭先生は少し離れたボート乗り場で待機して下さい。」
「施設に確認したところボートを借りることができるそうです。」
「A先生(若い体育の先生)にボートを漕いでもらいます。」
「子どもたちの『燃えろよ燃えろ』の1番が終わったら火をつけて下さい!」
「岸に着いたらボートから下りて火の子の所に行って下さい。」
「そこからは、練習どおりにやっていただければと思います。」
「ボートから下りるときに足が濡れてしまうのは我慢して下さい。」
教頭先生もノリの良い先生です。
担当の先生のお願いを二つ返事で引き受けていました。
6.楽しみにしていたキャンプファイヤー開始!
日が沈み、辺りが暗くなって来ました。
子どもたちが笑顔でキャンプファイヤー会場の砂浜に集まってきます。
「時間になったので、これからキャンプファイヤーを始めたいと思います。」
「みんなで楽しい思い出を作りましょう!」
司会の子どもの言葉で、みんなが楽しみにしているキャンプファイヤーが始まりました。
「最初に目の前の大きなキャンプファイヤーに点火したいと思います。」
「そのためには、火の神に来ていただけなければなりません。」
「みなさんで『燃えろよ燃えろ』を大きな声で歌って火の神をお迎えしましょう!」
司会の子が「燃えろよ燃えろ」を歌い出すと、子どもたちも一緒に歌い始めます。
「燃~えろよ、燃えろ~よ!炎よ燃~え~ろ~!」
7.「お~!すげ~!」火の神が海から登場!
子どもたちの歌に合わせて、火の子役の子どもたちが波打ち際に並びました。
火の子が並び終わったと同時に海の上に1つの明かりがつきます。
それを見た子どもたちから歓声が上がりました。
「あっ~!なんか光ってる!」
「本当だ!すげ~!」
「海から火の神がくる!」
「お~!すご~い!」
司会の子どもがこう言います。
「火の神が遠い海の向こうから来て下さいました。」
「もっと、大きな声で歌ってコチラに来てもらいましょう!」
子どもたちの歌声がさらに大きくなりました。
「燃~えろよ、燃えろ~よ!炎よ燃~え~ろ~!」
まさか、火の神が海から来るとは思っていなかったのでしょう。
もちろん、ヒソヒソ話を聞いていなかったら私も驚いていたと思います。
当然ですが、他の先生方も子どもと一緒に驚いていました。
キャンプファイヤー担当の先生は「してやったり」という顔でにんまりしています。
8.火の神の炎が小さくなっている?
子どもたちは大きな声で「燃えろよ燃えろ」を歌っています。
そして、火の神が自分たちの前に現れるのを今か今かと待ちかまえています。
しかし、大きな声で「燃えろよ燃えろ」を歌っているのですが、火の神は我々の前に現れてくれません。
さらには、心なし火の神のたいまつの炎が小さくなっているように感じます。
すると、担当の先生がマイクを使って子どもたちに呼びかけます。
「もっと大きな声で歌いましょう!」
「火の神にガンバる心を伝えるんです!」
「火の神!ガンバれ!」
「火の神!ガンバれ!」
9.火の神ガンバれ~!火の神~!
子どもたちは歌うのをやめ、担当の先生と一緒に応援を始めました。
「火の神!ガンバれ!」
「ガンバって!火の神!」
「もう少しだよ!もう少しガンバって!」
「コッチだよ!」
「火の神!火の神!火の神!火の神!」
冷静に聞いていると、担当の先生や子どもたちの言っている言葉がおかしいのに気づくでしょう。
この子たちにとって、神様を応援するということは人生の中で最初で最後の事でしょう。
しかし、担当の先生や子どもたちは真剣に「ガンバれ!」と叫んでいます。
ただ、がんばるのは火の神ではなくA先生なのですが・・・・。
担当の先生や子どもたちの応援は神様に伝わらなかったのか、火の神の乗ったボートは、どんどん、小さくなって最後には消えてしまったのでした。
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