学校が荒れていて多くの先生が異動希望を出したらどうなる?人事異動⑤

離任式

1.異動希望を無視できない教育委員会は・・・


2.同じ市内にある2つの荒れた学校

 ある市内に2つの中学校がありました。東中と西中です。東中と西中は昔から落ち着きがなく「常に荒れている」と言われている学校です。

 そんな東中に私は生徒指導主事として赴任をしたのです。

 4月になり学校が始まりました。確かに「やんちゃな子」がたくさんいます。ただ、私はそれまでにも様々な学校で「やんちゃな子」の相手をしてきています。その経験から、私は東中の子どもたちに次のような印象を持ちました。

「やんちゃだけど、極悪ではないかな~。」
「悪いことをするけど、正しい対応や支援をすれば素直になるな~。」
「この学校が荒れているのは、教師の指導力不足によるものではないかな?」

3.生徒指導主事と1年担任として支援開始!

 私は生徒指導主事と1年生の担任となりました。そして、1年部の先生と一緒に子どもたちの支援を行います。

「落ち着いた学校にする。」
「自分で考え自分で行動できる生徒を育てる。」

 私たちはチームとして、この2つの目標を共有し様々な活動や支援を行いました。

 その効果はすぐに現れます。私が赴任した翌年には「問題行動」や「不登校」が劇的に減少します。さらには成績も上がっていきました。
 もちろん、子どもたちや保護者の笑顔も増えていったのです。

4.2年後、笑顔の絶えない楽しい学校に!

 私が赴任して2年後。私の学年が3年生になったとき、全ての学校活動が円滑に進むようになりました。

・授業でムダなおしゃべりをしたり、出歩いたりする子がいない。
・ふざけすぎたり、しゃべりすぎたりすると、仲間同士で注意をしあう。
・提出物や忘れ物がほとんどない。
・友達とのトラブルが少なく、トラブルとなった場合もすぐに解決する。
・部活に熱心に取り組む。
・生徒会活動が盛ん。
・地域の方に明るくあいさつができる。など

 東中に悪い印象を持っていた地域の方からも「お褒めの言葉」をいただくようになりました。

 3年前までは、地域からの電話と言えば「うちの犬をからかうな!」「ゴミを庭に投げてきた!」など苦情ばかりだったんです。

5.東中に残りたい気持ちはあれど・・・

 私は東中に赴任する前、前任校の教育委員会から次のように言われていました。

「B市の教育委員会から連絡がありました。」
「西川先生に東中で生徒指導主事をやってもらいたいとのことです。」
「東中に行ってもらえませんか?」
「その代わり3年後にはA市に戻れるようにします。」
「A市とB市の交流という形で書類を整えます。」

 東中は落ち着きました。それ以上に他の学校に負けないくらい良い学校になりました。子どもたちも、毎日、笑顔で学校を楽しんでいます。このまま、東中に居続けたい気持ちでいっぱいです。

 しかし、東中での仕事が終わったいま、A市とB市の交流という形で東中に来た私はA市に戻らなければなりません。交流期間の3年は今年で終わりです。東中に残りたい気持ちもありましたが私は覚悟を決めて異動希望を提出したのです。

6.異動希望を出していないのに異動?

 東中を転出する先生は合計で10人でした。私は同じ学年に勤務していた2人の先生に声をかけます。

「東中が落ち着いて良かったね!」
「この状態なら東中に残りたかったよね~。」
「僕は交流だからA市に戻るんだけど先生たちは?」
「なんで異動希望を出したの?」

すると先生達から思いがけない言葉が・・・。

「私は異動希望を出してないのに西中に行くんです。」
「僕もです!」
「突然、校長から異動を命じられました。」
「このまま東中にいたかったのに・・・。」
「西中は荒れているから行きたくないんですが・・・。」

 私は他の異動する先生たちに「異動理由」と「異動先」について聞いてみました。すると、私以外の全ての先生が「異動希望」を出していないことが分かったのです。

 私の異動先は希望通り「B市」の中学校です。しかし、残りの9人は全員が「西中」への異動です。

 そのとき異動をする10人の教員のうち、異動希望を出したのは1人(私)で、残りの9人は異動希望を出していませんでした。

 異動先も同様です。私の異動先は希望したB市の中学校です。しかし、残りの9人は希望していない「西中」に異動することになっていたのです。

7.荒れている西中の先生たちは異動したい!

 なぜ、そのような異動が起こったのでしょうか?

 後日、私は西中に勤務している知り合いの先生から話を聞くことができました。そこで、教えてもらった理由が下記のものです。

・西中の荒れは解消していない。
・問題行動や不登校が多く生徒も落ち着いていない。
・西中の先生の多くが異動希望を提出した。
・数が多いため、年功序列や西中での勤務年数によってで異動が決まった。
・毎年、半分に近い先生が異動する。

 これは東中とは逆の状態です。

・東中の荒れは解消した。
・問題行動や不登校はほとんどなく生徒も落ち着いている。
・東中の先生で異動希望を出したのは1人。

8.どうする教育委員会?

 先生たちの異動希望を無視することはできません。特に組合に入っている先生であればなおさらです。

 当然、教育委員会や校長は、先生たちの異動先を探します。しかし、人数が多いため全ての先生の異動願いを叶えることはできませんでした。

 さらに、西中と言えば「荒れた学校」の代名詞です。自分から「西中に行きたい!」と言う先生はいないのが現状です。

 それでも、異動希望を出している先生たちの希望を叶えないわけにはいきません。もちろん全員は無理としてもです。

 そこで、教育委員会と校長が考えた奥の手は「行政異動」です。

9.行政異動ってなに?

 私が「行政異動」という言葉を聞いたのはこのときが初めてです。それでは「行政異動」とはどのような異動なのでしょう?
 
 西中には異動希望を出している先生がたくさんいます。校長や教育委員会は、その希望を受け入れなければなりません。もちろん、全ての異動を受け入れるのは不可能です。

 出る先生がいれば、入る先生も必要です。しかし、西中に来たいと言ってくれる先生は市外にほとんどいません。

 教育委員会や校長は、まず、新規採用教員を積極的に受け入れます。なぜなら、新規採用教員には拒否権がないからです。

 次に行うのが「行政異動」です。

 西中からの異動を希望している先生は東中に異動してもらいます。それと同時に東中の先生を西中に異動させます。これが「行政異動」です。簡単に言うと、同じ市内や区内で先生を交換するというものです。

 本来は「養護教諭(保健の先生)」がやむを得ない理由で異動や退職をしたときに使われる異動です。

(養護教諭は専門職のため各学校への配置は1人が基本です。そのため、どこかの養護教諭の異動が決まると、自動的に他校の養護教諭も異動することになります。)

10.3年後、荒れた学校に逆戻り

 私が東中を異動してから3年後。再び東中が荒れ始めます。ただ、これは仕方のないことです。

 以前に書いたとおり、「学校の荒れ」や「学級崩壊」は教師の指導力に依存しています。同じ子どもたちでも指導力のある教師が担任をすれば学級は崩壊しません。同様に指導力のある校長がいれば「学校が荒れる」こともありません。

 東中と西中では行政異動が一般化しています。そのため、何人もの先生が「東中」と「西中」を行ったり来たりしているのです。

 当然、この先生たちは「荒れた学校」を立て直す方法を知りません。逆に「落ち着いた学校」を荒れさせる対応を無意識に行ってしまいます。

 なぜなら「荒れた学校」を「落ち着いた学校」にした経験が無いのですから。




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